特に大手ブランドは幅広いラインナップを取り揃えるようになった現在。
“トッププロ使用モデル”と宣伝されながらも、実際には市販品とかけ離れた仕様になっている事が非常に多いのです!
実際はなんのラケットなの?
※内容に関しては、写真などの情報を元に筆者が独自に判断したものとなります。実際とは異なるもの・正確ではない部分が多少なり含まれる可能性がありますので、予めご了承下さい。
『市販品とプロ仕様品との間違いさがし』をするくらい気持ちで、一緒に楽しんで頂けたら幸いです。
ウイルソンプロスタッフのペイントジョブ
90年代〜2000年代はエドバーグやサンプラス、現在はフェデラーや錦織選手、チチパスなどの活躍によって、高い人気を誇っているラケット界の巨人:WILSON。
中でもプロスタッフは男子トッププロにも多く使用されているモデルのひとつなんですが、どうやらプロストック(ペイントジョブ)が多いラケットのようです。
Embed from Getty Imagesフェデラーは開発に関わっていた事もあって、市販品とほぼ同じ形状のラケットを使用しているようです。
フェデラー以外の選手は黒x白デザインのラケットを使っていますが・・・それがペイントジョブ率が非常に高いのです。
デルポトロはK Six One 95 (18×20)がベース
Embed from Getty Images長らくK Six-One95の18×20のパターンを愛用していたデル・ポトロ。
以前はBURN FST(もちろんコスメだけ)、現状では黒x白のプロスタッフカラーになっていますが中身は変わってない模様。
塗装もベルベットコーティングではなく、つや消しブラック。
現行プロスタッフの市販品には18×20が存在しない事、Six-Oneの特徴であるラウンド気味の形状である事からも間違いなさそう。
(鉛テープでBOXっぽく見えるところもありますが、写真を見回すとやはりラウンド形状でした。)
バウティスタ・アグートもSix-One 95 18×20
Embed from Getty Imagesここ数年、安定して活躍しているアグートのラケットも黒x白のプロスタッフコスメ。
ストリングパターンが18×20、ラウンド形状、そしてぴっかぴかの艶ありの塗装は、明らかに市販品とは異なるビジュアル。
Six-One95ユーザーだったので、現在もこれをベースにセッティングしている可能性が高そうですね。
面の大きさが違うようにも見えますが、デル・ポトロとほぼ同じベースモデルだと推測されます。
ラヨビッチもエバンズもSix-One 95 18×20
セルビアNo.2のラヨビッチも黒x白のプロスタッフカラーを使用していますが、パッと見た感じで市販品と違うのが分かりますね。
Embed from Getty Imagesラウンド系の形状、18×20のストリングパターン、艶ありの塗装になっています。
Embed from Getty Images小柄ながら切れ味の良いショットを繰り出すダン・エバンズ(Dan Evans)も、おそらくラヨビッチと同じラケットを使用。
次に紹介するコールシュライバーもSix-One系のラケットを使っていて、片手打ちBHに愛されるフレームでもあることが分かります。
ちょっと変わりダネ:コールシュライバー
Embed from Getty Images長い間、市販品プロスタッフコスメだったコールシュライバーのラケット。
しかし中身はずっとSix-One95ベースのもとだったと思われます。
ただこれまでのラケットと異なるのは、ストリングパターンが変化している点。
僕が知る限りではコールシュライバーはこれまでに18×20、16×19、16×18の3パターンを使用していたようです。
過去にはK-blade 98を使用していましたが、よく見るとフレームサイドにPWSのふくらみが。
市販BLADEはPWSがないので、この頃からすでにSix-One系のフレームをペイントジョブで使っていたようです。
ペトラ・クビトバもペイントジョブ
Embed from Getty ImagesWTA屈指の破壊力のあるショットを放つクビトバのラケットも、黒x白のプロスタッフコスメ。
しかしツヤッツヤの塗装は明らかに市販品と異なり、フレームもラウンド形状ですね。
そしてストリングパターンは16×20。クビトバはこれまでにBLX TOURやSTEAMを使用してきたので、現在もこれらのラケットを使用していると思われます。
16x18BLADEが俊足ストローカーに合う?
もちろんプロスタッフデザイン以外にもペイントジョブと思われるラケットが存在しています。
ここではBLADEのペイントが施されたラケットに注目。
ハレプ:完全に特注品のラケット
先に挙げた選手のほとんどが旧モデルをペイントジョブで使用していたのに対し、ハレプのラケットは全く由来が分からないものになっています。
Embed from Getty Imagesフェイス内側の2/10時・5/7時の4箇所にグルーブ(溝)があり、グロメットが隠れるようになっています。
そしてストリングパターンは16×18。ラケットの断面形状はX-Loopっぽく見えない事もないですが、普通のボックスに近い印象。
BLADEコスメの前はBURNコスメ。と言っても、ラケットの中身はどちらも同じと思われ、先ほどのSix-One由来のプロスタッフとは違って一体なんのラケットが由来となっているのか分からない状態です。
デミノーもハレプと同じラケット
素早いフットワークが持ち味のデミノー、ラケットはハレプと同じモデルと推測されます。
Embed from Getty Images特徴的なグルーブ、16×18のストリングパターンは完全に合致します。
フェレール:バボラコスメだけど・・・?
Embed from Getty Imagesそしてこのラケットに関しては、キャリア晩年のフェレールも使用していたようです。
プリンスを離れたのちに、一時期バボラ・ピュアドライブを使用していたのですが・・・ウィルソンに移る直前はバボラっぽい黒塗りラケットを使用。ハレプ/デミノーのラケットと同じ特徴的なグルーブがあるのが分かります。
契約が切れるまで待ち切れなかったのかも。
こう見ると、このラケットは俊足ストローカーに愛される性能のようですね!
錦織選手:クラッシュゾーンはどこへ?
Embed from Getty ImagesBURNからULTRA tour95CVへの変更は大きなインパクトがあったと思うのですが、写真を良く見ると最大の特徴であるはずのクラッシュゾーンが見当たらないのです。
クラッシュゾーンをつけたくてウルトラの名称になったはずなんですが、実際には付いてないというのは驚き。
HEAD:見分けるのは難しい・・・
ジョコビッチを筆頭に、プロでも高い使用率を誇るヘッドのラケット。ペイントジョブ率はかなり高いと思われますが、外観から判断するのはかなり難しい感じですね。
ですのでここでは主にストリングパターンに注目して、市販品との違いを解説して行こうと思います。
ジョコビッチ:18×19のパターンになっている!
Embed from Getty Images市販品のスピードプロは18×20のパターンを採用していますが、ジョコビッチのラケットは18×19となっています。
そもそもベースになっているラケットはスピードではないようなので、まさにジョコビッチ専用プロストックという感じでしょうか。
シュワルツマン:今も18×20のパターン
Embed from Getty Imagesジョコビッチとは反対に、市販品よりもストリングパターンが密になっているのがシュワルツマンのラケット。
G360ラジカルMPは16×19のパターンですが、シュワルツマンは18×20のパターン。
というのも、Graphene採用前のラジカルMPはストリングパターンが18×20。
おそらくシュワルツマンのラケットはYoutek(IG)あたりのフレームをロング加工して使用していると思われます。
マレー:BOX形状+フラットビーム
Embed from Getty Imagesマレーといえばラジカル。
市販品が21~23mmのテーパード+台形っぽい断面形状を採用しているのに対し、マレーの手に握られているラケットはフラットビーム+純ボックス形状。
ガスケ:LMインスティンクトの16×19パターン
僕がプロのラケットを細かくチェックしはじめるキッカケになったのが、リシャール・ガスケ。
Embed from Getty Imagesリキッドメタルインスティンクト(XLかも?)を使用していて、LM特有の凸凹などはあるものの、市販品の18×19とは異なる16×19パターンのラケットを使用。
当時、LMインスティンクトを使っていた僕は『あれ?ガスケのラケット、俺のとストリングパターンが違うじゃん!』とびっくり。
それ以降、プロのラケットのストリングパターンをチェックするのが習慣となったのでした。
2004年後半〜2005年頃にナダルの同世代選手として、本格的に活躍し始めたガスケ。
この躍進のきっかけの1つがラケットの変更だったのではないかと推測されます。2004年の始め頃まで使用していたのはi.Prestige XL。
フォアハンドもフルウェスタンの厚いグリップでした。
現在では極太グリップエンドに短く巻かれたトーナグリップ、フォアハンドはイースタン(?)くらいまで薄い握りに変化しています。
(ラケットは初期インスティンクトをベースにしているフレームを今も使っているようです。)
天才の感性は常人には理解出来ない領域にあるのかもしれませんね・・・
ヨネックス:旧型使用選手が多い
ストリングパターンだけが違うというパターンは少なく、旧型のフレームをペイントジョブで使用している選手が多いのがYONEX。
ワウリンカ:どう見てもフェイス形状が違うVCORE
ブイコアプロの広告塔として活躍しているワウリンカ。
しかしどう見たって形が市販品とは違うぞ、と。
フェイスのトップ側が広めになっている市販品に比べ、上下にほぼ対称的な形状になっているワウリンカのラケット。
どうやら初期ブイコア95Dをいまだに使用しているらしいとのこと。
西岡選手:エアロフィンがない!旧型をペイントジョブ?
日本テニスを背負って立つ1人である西岡選手。
その西岡選手のラケットを見てみると・・・VCOREにしてはツルンとしてるような気が。
市販品ではシャフト〜フェイスに切り替わる部分にエアロフィン(くぼみ)が複数設けられているのですが、西岡選手のラケットには見当たりません。
形状やストリングパターンから推測するとVCORE SVかSIあたりをペイントジョブで使用しているんじゃないかと思われます。
ティアフォー:Duel Gをペイントジョブ?変則的な使い方!
独特のテイクバックから、高速スイングを繰り出すティアフォー。
ブイコアプロを使っているのですが、どうやら変則的な使い方をしているようです。
クロスストリングの1番上と1番下が、メインストリングと同じグロメットを共有しているのが分かります。
これはDuel Gのみに採用されたシェアホールであることから、ペイントジョブの可能性が高そうです。
またDuel Gは16×20のパターンでしたが、ティアフォーは16×19パターン。写真を色々見比べた結果、どうやらクロスの1番上を張ってないようです。
シェアホールなので1本通していなくてもグロメットが余ることはなく、かなり自然な見た目ですね(笑)
シェアホールのメリットは、フレームに開ける穴の数が減らせるので剛性が落ちにくいという点。ティアフォーの爆発的なパワーをぶつけるにはDuel Gベースが良かったのかもしれませんね。